JICEは2022・2023 年度の 2 年にわたり、「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発事業(文化庁)を受託し、就労分野における教育モデルの開発、教育モデル活用のための教師研修の実施、そして各取組に関する成果報告会を実施しました。
(詳しくはこちら。「日本語教育の参照枠」を活用した就労分野における教育モデルを開発しました | 事業ニュース | JICE 一般財団法人 日本国際協力センター)
つづく2024年度は、継続して関連事業(文部科学省)を受託し、開発した教育モデル(就労)の普及を目的として、以下の3つの取組を実施しました。
就労分野のさまざまな教育現場に、教育モデルを基にしたカリキュラムが普及することをねらって「教育モデル応用研修」を開発・実施しました。研修は、所属機関でカリキュラム編成を行うなど中核的な役割を担っている中堅教師を対象として、2024年8月から11月にオンラインの形態で実施しました。全国10都府県から16名が受講しました。
研修は、動画視聴や事前課題のワークとオンライン同期型研修(全5回)で構成し、内容を2段階に分けて取り組みました。第1段階では、「日本語教育の参照枠」および「教育モデル(就労)」を応用したカリキュラム案・評価ツール等の作成を体験してもらいました。受講者は、各自でカリキュラム案の作成を進めながら、同期型研修で定期的にお互いの進捗報告や意見交換を行いました。こうした研修の進め方によって、磨きがかかった成果物ができ、中堅教師としての資質・能力を向上させることができました。第2段階では、第1段階で身につけた知識・経験を、それぞれ自分の所属する教育機関に持ち帰り、同僚教師・上司・クライアント等の関係者に向けて報告会や勉強会等を行うというタスクに取り組んでもらいました。同期型研修最終回にアクションプランを立て、研修終了後2か月の間にプランを実行に移してもらい、その後2025年1月のフォローアップセッションにて各自の取組の報告や意見交換をしました。
「教育モデル」を所属機関での応用・実践につなげるところまで踏み込んだ本事業の取組は、中堅教師に求められる実践的な資質・能力の向上と、「日本語教育の参照枠」や「教育モデル(就労)」の普及につながる取組となりました。
本取組では、就労分野で既に実績を持っている4団体と連携し、全3回の事例検討研修会を開催しました。就労分野における「日本語教育の参照枠」活用の在り方は、教育現場の状況によって様々です。本取組では、就労分野の日本語教育のさまざまな教育事例を共有し、業界における共通課題や、「日本語教育の参照枠」あるいはそのベースとなったCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の活用について多角的に検討することを目指しました。
参加団体は、JICEのほか、次の4団体です。特定非営利活動法人日本語教育研究所、ビジネスプロセスコミュニケーション研究所(BPC研究所)、一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)、公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT)(発表順)。
3回の研修会を通じて、就労分野の日本語教育において、各団体がもつ特徴や担っている役割を理解するとともに、「日本語教育の参照枠」活用について共通理解や継続的な議論の重要性を確認することができました。また、発表者・パネリスト以外にも、各団体に所属する日本語教師が研修会を視聴したことで、「日本語教育の参照枠」への理解を広める機会にもなりました。
「パフォーマンスを引き出す最新の就労日本語」と題した企業向け外国人材受入れセミナーを、Zoomウェビナーで2回実施しました。企業関係者のみならず、日本語教育関係者も含め、262人以上の視聴がありました。
就労分野で「日本語教育の参照枠」を活用した教育実践が普及するためには、日本語教師に対する研修だけでは不十分です。職場のコミュニケーションの当事者であり、日本語教育の必要を認識している(あるいは感じている)企業側の関係者に向けたアプローチが不可欠です。セミナーを通して、「日本語教育の参照枠」を活用した教育方法等の理解を促進し、企業が従業員のパフォーマンスを確実に上げるための発注方法についてイメージを持ってもらうことができました。
就労分野の日本語教育は、育成就労制度の公布、認定日本語教育機関や登録日本語教員の創設など、大きな変化の中にあります。
今後も、就労分野における日本語教育およびその人材養成に尽力してまいります。
多文化共生事業部
本事業に関しては、こちらをご参照ください。
「日本語教育の参照枠」を活用した教育モデル開発・普及事業:文部科学省